チーズ好きに贈るチーズレシピ

牛乳は飲めないが乳製品をたくさん欲する日常なんである。チーズにヨーグルトに、生クリームだって平気だい。バターは丸かじりしたい欲望に毎日打ち勝つ努力をしている。

なかでも、デパートのヨーロッパ物産展のようなもので購入して以来、あたしは”エポワス”好きになった。一口食べるたびに「なんておいしいんだろお〜」とつぶやいている。旅先免税店では、いくつか仕入れて 人に配ったり(押し付けたり)もした。で、いつも土産物を持っていくと「いまいち」とも言わず軽く流されたりする人に「今度のはうまかった」とほめられていい気になったりしたもんだ。

そんな話は、どうでもいい。チーズの本である。

チーズ好きに贈るチーズレシピ

チーズ好きに贈るチーズレシピ

ウォッシュチーズの欄に、ちゃんとエポワスが掲載されていた。
が、次に、近年にない衝撃を受けた。

失楽園」で登場人物がエポワスとマルゴーを頼んで以来、バリでも日本人のほとんどがエポワスとマルゴーを頼む姿が増殖して(概要) 云々

ミルトンではありません。日本経済新聞に連載されていた例のアレである。
あたしは、瞬間、「エポワス好き」を撤回しようかと心が揺れた。が、モンゴル平原あたりで生まれ どういうわけだかセーヌ河をどんぶらこと流れ、濃尾平野にたどり着いたあたしである(本気にしないように)。渡辺淳一の陰謀に負けるもんかっ(どんな陰謀やねん)。

冷静に考えると、あたしがばら撒いたエポワスを食べてくれた人たちは、おそらく誰一人としてカノ「失楽園」を読んだり見たりしていないであろう、と思い至りいささか安堵した。今後、エポワスを食べるたびに、川島なお美だの黒木瞳だのを思い出してしまうかと思うと、いささか苦々しいことも確かだが。

人間、知らないほうが幸せなことも、ある。