芸のためなら亭主も泣かす

文春連載時に楽しみにして読んでいたっけ。

芸のためなら亭主も泣かす

芸のためなら亭主も泣かす

周囲を見渡すと、女性性があふれて持て余して行動せざるを得ないタイプの人の多くは根源的な意味や理屈や自意識を言葉で語り理解しようとするよりもそのもてあましたエネルギーをストレートに発散させているタイプが多いように見える。何の疑問もない人の場合は、ただ単にその女性性をあちこちで発揮して楽しんでいるし、何か疑問を抱いているであろう人の場合は、見て見ぬふりをして突き進んでいる。
そんな中で、真っ正直に自分と向き合ってしまう中村うさぎは、とても珍しい種族だと思う。
自分を分析していくことと、ある意味ふしだらであることの両立は、女性にとってはまだまだ難しい分野なんじゃないだろうか。
自分が何を欲しているのかわからないまま、何の幻想を投影しているのかわからないまま、とりつかれたような行為を繰り返す。
このあたりの自意識の問題で傷つきつづける女性がたくさんいるのを見るにつけ、救いがあるといいな、と願いつつ、自らの身を投げ出して最前線で突き進む中村うさぎに、ある敬意を抱く。